名古屋・京都例会 令和3年5月例会
2021年 05月 13日日 時 令和3年5月16日(日)13時30~15時40分
※Zoomミーティングで開催します。参加ご希望の方はy-niho@suac.ac.jpまでお問い合わせください。
研究発表 名倉ミサ子
発表論題「真珠庵本『百鬼夜行絵巻』における転換」
時 間 13時30分~14時30分(発表40分+質疑応答20分)
【要旨】
京都大徳寺の塔頭真珠庵が所蔵する『百鬼夜行絵巻』(真珠庵本)は、現存する最古の百鬼夜行絵巻である。そこには妖怪が行列する様が描かれているが、行列の構成は舞楽四箇法要という仏教儀式の構成と似通っている。すると、真珠庵本では仏教法要の中でも最も盛大で荘厳な儀式が、妖怪行列に転換されているということになる。本発表は真珠庵本の随所に見られるこのような転換について考えてみたい。例えば、絵巻には説話や伝承の中の小町や和泉式部を髣髴とさせる妖怪が描かれているが、これは、平安朝の宮廷歌人の二人がさすらい人になった、とする中世の捉え方があってこそ表現され得るものである。真珠庵本が成立したのは連歌や俳諧、能や狂言などの文化文芸が盛んに行なわれた時代であり、真珠庵本の表現にそうした背景を読みとる試みをする。
研究発表 間枝遼太郎(北海道大学大学院 博士後期課程)
発表論題「『諏方大明神画詞』縁起絵部における諏訪明神」
時 間 14時40分~15時40分(発表40分+質疑応答20分)
【要旨】
諏訪信仰の代表的な縁起書の一つである『諏方大明神画詞』は、諏訪明神の縁起譚を記す「縁起絵」部と、諏訪社の一年の神事の詳細を記す「祭絵」部の二部構成で成り立っている。そのうちの縁起絵部では、様々な神話・説話によって軍神としての諏訪明神の活躍が記されているが、それらに注目して分析を加えた先行研究は多くない。一方、『画詞』そのものについては近年その歴史的位置付けについての検討が進められ、足利尊氏の奥書や後光厳天皇の外題の存在などから、中世京都という場、天皇との関わりという点において意味を持ち機能する縁起であることが指摘されている(石井裕一朗「『諏訪大明神絵詞』外題・奥書考」(『信濃』第72巻第12号、2020年12月)など参照)。本発表では、そのような〈天皇との関わり〉という視点から『画詞』縁起絵部の内容を捉え直し、諏訪明神がどのような存在として描かれているのかを検討する。